写真:森本美絵 ©Mie Morimoto

■山田スイッチ活動遍歴

  1. 山田スイッチ

    A to Z展は、関わってる人もすごい面白いんですよ。ボランティアの子達には、「私、ニートだから……。」って不安そうな子もいて、最初は動きが緩慢だったりするのに、倉庫の作業だとすごい楽しそうに働いている。声が小さかった子が、最後に声出しで「はい!おす!おす!」ってやってたり。「この子、人生変わったわ?」と思う。私も2002年の時に、なにもわからず倉庫をグルグル歩いてたんですよ。仕事も、週に一度『ぴあ』にお笑いのコラムを書くくらいしかしてなくて、歩いた先には何があるんだろう?って思いながら、ずっとグルグル歩いて。でも、グルグル巡回をしていると面白いんですよ。「人が見てないから、ちょっと作品の前で踊ってみよう」とか(笑)。ほんとはやっちゃいけないんだけど。

  2. 児島やよい

    スイッチさん、踊りもやってるんですか?

  3. 山田スイッチ

    ええ、白塗りでテクノ舞踏っていうのを。ぴょんこぴょんこ飛び跳ねたり、面白い動きを表現する。「お前、メンバー足りないからやれ!」って言われて始めたんですけど。

  4. 児島やよい

    テクノ舞踏!?それはお笑いの延長として?

  5. 山田スイッチ

    そうですね。舞台に慣れとかなあかんな、と思って。今は、子どもを白塗りにして、一緒に踊ったら面白いとか考えてます。

  6. 児島やよい

    あははは、やっぱりお笑い路線。

  7. 山田スイッチ

    お笑いのほうは、東京で一年、相方と組んで『しあわせスイッチ』ていうコンビを組んでいたんです。そのおかげでお笑いのコラム書いてみたらって言われて、書いたらコラムニストになっちゃって。で、倉庫の中をグルグル歩いてたおかげで、奈良さんのことも書かせてもらったりとか。いいのかな?って。

  8. 児島やよい

    行動ありきですね。

  9. 山田スイッチ

    なんかやっちゃえば、なんかなるんじゃないかって。

  10. 児島やよい

    エッセイを読んで、火吹きのパフォーマンスをしていたという話には驚きました。

  11. 山田スイッチ

    子どもの前では火吹きはやめた方がいいですね(笑)。実は妊娠してからずっと吹いてなくて、このままじゃだめだと思って、スピリタスていう96度くらいあるウォッカを買ってきて、息子が見てない物置きで吹こうと計画中なんです。

■「HOPE」展には感動しました。

  1. 山田スイッチ

    児島さんは、ぴあのアート・フェスティバルみたいな展覧会をされていましたよね。

  2. 児島やよい

    「希望/HOPE」展(2003年)。あれは、私と内田真由美さんとでキュレー ションしたんですよ。

  3. 山田スイッチ

    そうなんだ! 私、北野武の絵の前で「うわー、すげー」ってなりました。アラーキーに奈良さんがいて、草間彌生さんがいて、全部いた。これはヤバイって。

  4. 児島やよい

    ロックフェスみたいな展覧会にしようって提案して、「未来は僕らの手の中」というザ・ブルーハーツの曲をサブタイトルにしました。

  5. 山田スイッチ

    展覧会って、どんな段取りで仕事を進めるんですか?

  6. 児島やよい

    HOPE展の場合は、ともかく時間がなくて、2か月くらいで全部やらなきゃいけなかった。『ぴあ』だから、美術っていう狭いセレクションじゃなくて音楽とか映画とかジャンルを越えていろんな人が参加してもらえるようにするにはどうしよう?というところから始めた。それでロックフェスみたいに、「希望/HOPE」というテーマで、持ち歌でも新曲でもいいから出ませんか?って、出品して欲しい人たちに声をかけていって。

  7. 山田スイッチ

    奈良さんの『The Little Judge』が出てて、すごく好きだったから、「またここで会えた?」って。

  8. 児島やよい

    そう!私も嬉しかったです。それと、青島千穂さんとかカイカイキキの若手の作品の前に舟越桂さんの作品をあえて展示したんですが、最初は「合わないんじゃない?」て心配したんだけど、置いてみたら「意外といいかも!」って。桂さんが「生き生きしてて嬉しい」って喜んでくださって、私たちも嬉しかったですね。そんなふうに、単発で依頼が来て「えいっ!」と取り組む展覧会もありますが、自分で企画を立てて、予算を工面して一から実行するのは時間もかかるし、難しいですね。

■どんな風に文筆活動しているかというと・・

  1. 山田スイッチ

    私、子どもを産んですぐの頃に、先輩の尊敬する作家さんにこう言われたんです。「私が本格的に作家活動を始めたのは、子どもを産んでからなんですよ」って。「子どもを産むとアドレナリンが出てるのをすごく感じませんか? 子どもを産んでからが「勝負」というか、やっぱり家族がいるから頑張って戻ってこれる」って。。

  2. 児島やよい

    実際、執筆中はアドレナリンが出てます?

  3. 山田スイッチ

    出てるっていうか、毎週育児日記を地元紙に書いてるんですけど、いつもよくわからないけど書いてて、読み返してる暇もなかったりもするけれど、たまにまとめてみたら連載66回目で、「そんなに書いてたんだ!」ってびっくりするし、「そういえばこんなことがあったんだ」って読んで思い出したりして。とにかく今、子供がいるから、なんでもぎゅーっと凝縮してるんですよ。ボヤーとしてても文章とか出てこなくて…。書きたいものが頭の中にあるのに、育児が忙しくてずっと書けないでいて、「あぁ、よしよし」って溜めて溜めて、「もう書きてぇよ」ってなって、子供をおばあちゃんに預けて、ワーって書いちゃうのが今 のパターンです。

  4. 児島やよい

    スイッチさんの文章、面白くて大好きです。すごい臨場感があって、A to ZのHPのリポートも、「そうか中はこういう状況なんだ」というのが伝わってきますよ。

■どっちを選ぶべき?人生の岐路

  1. 山田スイッチ

    自分は30歳になったところで、これからどっちに行ったらいいんだろう?って考えることがあります。嫁ぎ先のおばあちゃんが理想の女性で、無茶苦茶なんだけど、料理が上手くて好きに生きてる感じがよくて。社会とどんどん関わっていくべきなのか、こうして畑と家の中だけで一生終えるのもありだなって思ったりもする。でも、今はわからないからとりあえず全部やっておこうっていう姿勢で。子育ても、仕事をする時はおばあちゃんに預けられるから。児島さんはどうですか?

  2. 児島やよい

    どうだろう。私はもう45歳なんですけど。

  3. 山田スイッチ

    えぇー!38歳くらいにしておいてください。

  4. 児島やよい

    私も、なんか岐路に立っている気がする。子育てしながらだと今までと同じやり方では仕事できない。たとえば夜のオープニングに毎晩行ったり、海外にぱっと取材に行ったりするのは難しいし、違った仕事の仕方をしないといけない。年齢的にももっと若い人に席を譲って、別のことをやっていかなきゃいけないなという気もしていて。やっぱりアートのライターって、ある程度フットワークが軽くて情報を常に入れてないとできないじゃない? 若い人の方が元気で感性もフレッシュだし、そういうので勝負できる年代は終わったなと。それと、世代感というのもある。若手のはずだった奈良さんと世代的には同じくらいですか ら(笑)。彼がここでA to Zという集大成みたいなものをつくって、また新たにやっていきたいっていう気持ちがわかるような気がする。

  5. 山田スイッチ

    児島さんも、子どもが大きくなって自由になってきたら、また何か新しいことができるのでは?

  6. 児島やよい

    それはそれでなにかできるだろうとは思うけど……フリーライターって、社会的にはフリーターと同じ分類で、非常に弱い立場なんだと思うの。子どもを保育園にいれたり、社会的な手続きをしていく時、そんなことを痛感してしまって。仕事のやり方をちゃんと考えよう、と。思っているんです。それと、子どもたちの未来に関わる問題を考えて、仕事にも反映させていきたいと思い始めています。

■子連れの秋刀魚売り?

  1. 児島やよい

    スイッチさんの今後の活動予定は?

  2. 山田スイッチ

    今、やりたいことが多すぎて、師匠が4歳になったらやってやろうということがいっぱいあります。言うのが恥ずかしいけど……小説を書くことや、息子を連れてブラジルに秋刀魚を売りに行くのもいいなって。以前、ブラジルで秋刀魚を売って歩いた時に、現地の人が「お前どこから来た」とか「また売りに来い」とか話しかけてくれて、窮地に立った時に助けてくれたんです。だから子どもを背負って売ったら売れるかなと。あと、子どもを連れてあえて過酷な旅行とか出かけたい。

  3. 児島やよい

    二ノ宮金次郎みたい(笑)。でも、なんで秋刀魚なの?

  4. 山田スイッチ

    それには思い出があって、原宿で友達と8センチくらいのヒールを履いてガッガって歩いてたら、お腹が減って午前3時くらいでどこも店が開いてなくて、路頭に迷っているところに喫茶店があったんです。秋刀魚定食があって、その時食べた秋刀魚の味が忘れられないんです。

  5. 児島やよい

    ははは。本当にユニークな話ばかりで、なんだか元気をもらえますね。。

  6. 山田スイッチ

    今日はお話できてよかったです。

  7. 児島やよい

    こちらこそ。

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2006年8月、青森県弘前にて収録
写真=森本美絵
デザイン=中村アスカ(Luna-lab)
構成=宮村周子
編集協力=酒井英恵

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