写真:森本美絵 ©Mie Morimoto

  1. 児島やよい

    岡田さんの作品に、こどもを育ててることが直接反映してはいないと思うんですけど、「俺の産んだ子」とかは、自分の妊娠の経験があるからできた作品?

  2. 岡田裕子

    そうですね。妊娠出産は他の人もそうだと思うけど、ショッキングで新鮮な発見のある経験だったので。身を通じて考える事も色々ありました。周囲や時代を読んでこんなものをつくったほうがいいなとかって言うことだけじゃなくて、制作したいなと。身近に肌身に感じてることから発想を得ないと沸いてこないというのもあるし、それを作品にして他の人が見て何かしらの批判でも共感でも反応があったりすることのにも価値があると思うんです。
     とはいえ自分のお悩み表現みたいになっちゃうと伝わるものも少なくなっちゃうし、発想は個人の主観なんだけど、寄せすぎず時には突き放して、作り上げる過程では変化してゆき、最初からしてみるとこれはできると思わなかったな、みたいのがいつもある。

  3. 児島やよい

    団地の平凡な主婦がビニール傘を持って歌い踊りながら、最後にその傘で自殺しちゃう作品《SINGIN’ IN THE PAIN》。岡田さん自身がその主婦を演じてましたけど、つくっていて辛かったとか?

  4. 岡田裕子

    あの作品は、別に最初から主婦が自殺というオチは考えてなかったんだけど、制作後半に、ラストはこの人、自殺しかないかな、と考えが変わって来て。そんな折、友人の主婦が自殺したという出来事がってなんともいえない思いがありました。あれはやっぱり他人事に感じられないからきつかったのかもしれない。自分が、自殺する主婦を演じて、その役にはまり込んじゃったりすると、暗い役だけに辛いんですよね。毎日の気持ちがすごく沈んじゃう。演技を仕事とする役者さんも時にそうだといいますね。撮影が終わるまでそういう気分にのめりこんじゃう。何でこの人自殺しなきゃいけなかったのか、って考えるとやっぱり自分と重なってきちゃうところがあるから。

  5. 児島やよい

    そうですね…。笑える作品なのかなと思って観ていると、衝撃的な結末が待っていました。日常に潜む孤独な狂気って誰でも他人事じゃないところがありますよね。ミヅマで発表してた「愛憎弁当」は、ベースはコミカルでしたね。社会批評も込めていたように思いましたが?

  6. 岡田裕子

    あれはね、あの料理の先生が、気が狂ってるというか、ナンセンスさを極端にしたような感じ。日本のお弁当文化のパロディーで、それをさらに外国で見せている、というように重複した組み立てなんですけど。最初の発想は子育てでズレちゃってる母の弁当つくることしか考えてなかったんだけど、過程で変化もしていって、映像作品の方ではアート表現を弁当で表現して、こどもの教育に役立てるという内容で、それがまたバカらしいんですが、ポリティカルコレクトネスとか、チャンスオペレーションとか、ジェンダーとか、美術に関わることをテーマにしています。2008年に、フランスのクレモンフェランで、ビデオの祭典みたいな催しがあって、そこでも出品しました。海外の人が見ることも視野に入れてつくった作品なんですが、アヤフヤな英語で喋ってるし、さらにフランスのお客さん、思ってた以上に英語が出来なかったんで不安だったんですが。そしたら結構受けて、あーよかったーって。日本のお母さんが神経質で、結果的にはどれも食べ物にならないわけのわからないお弁当になっていっちゃって、そんなバカバカしさ、つたわったんでしょうかね。ポリティカルコレクトネス弁当もおもしろがってくれた気がします。

  7. 児島やよい

    九十九里の海で撮った映像作品もありましたね。寅次郎くんが出てくる。

  8. 岡田裕子

    あれは現代音楽家の平石博一さんの音楽で、映像を絡めるようなことをしたいねっていうのが始まりでした。編集にえらい時間がかかったけど、楽しかった。曲は選ばせてもらったんですけど、いつもは重くコンテンツとかテーマとか考えて、はずせないみたいなプレッシャーの中でつくるのが、今回は曲に内容が少し流されてもいいやって遊び心もあったので気軽に楽しめました。曲はこんなイメージで制作したものじゃないんだろうけど、海を舞台に、ちょっとSFチックにしたかったんですね。雰囲気で強引に押し切っちゃってるけど、わりと堂々とした作品になった気がする。言葉にできない要素をたくさん入れ込んだ作品でした。

  9. 児島やよい

    今はやっぱり映像が中心ですか?

  10. 岡田裕子

    今、計画してるのは、友人とユニットみたいなのを組んで映像をつくりたいと思ってて。でも、来年にはペインティングも取り込んだ作品をつくりたいと考えてます、まだ準備段階なんですけど。
     あと11月に開催する千葉市のアートイベント「チバトリ」に、スペースがあれば未発表の作品とかを仕上げて出そうかなと思ってます。

  11. 児島やよい

    あ、そろそろ寅次郎くんが帰ってくる時間ですね。今日はどうもありがとうございました。

2008年7月4日 千葉にて

■近況メールインタビュー

その後、7月28日に家族3人で千葉の会田岡田家にお邪魔しました。海で撮った写真、たくましい寅次郎くんと、2回目の海体験ではしゃいでいる、赤ちゃんぽいうちのRQと、対照的です。ナイーブなだけにエキセントリックな(?)言動に出てしまう寅次郎くん、RQにはちょっと強烈だったようなのですが、とてもかわいい、サービス精神旺盛な少年、とお見受けしました。「学校はどう?」と訊くと「地獄だ~」と言っていた寅次郎くん。2学期はどう過ごしたのでしょう…。近況を含めて、岡田さんにメールインタビューです。

  1. 児島やよい

    夏にお会いしたのに、すっかり秋どころか冬になってしまって…。寅次郎くんの小学校ライフはその後、いかがですか?

  2. 岡田裕子

    相変わらずです。実は私が、来年度から多摩美で非常勤で教えることになりまして・・・。これを機会に、もう一つ足場としての住まいを持つ事を考えてます。で、せっかくのタイミングなんで転校しようかと・・・。あたらしい学校をどういうところにしようか検討中です。
    先日、公立の先生に転校の可能性をお話ししたら、妙に納得されてしまいました。本当に、合ってないんでしょうね。でも本人は元気ですよ。家で、冒険小説を書いてます(笑)。それをMACで清書してます。恐ろしい。(笑)

  3. 児島やよい

    そして「チバトリ」おもしろかったです!展覧会も充実していたし、岡田さんの新作も力作でしたね。寅次郎くんの役どころもぴったりでした。

  4. 岡田裕子

    千葉城(千葉市郷土博物館)の天守閣(?)部分で、千葉大生達と共同で制作した映像作品を上映しました。「ラ・コトブキ~ニュージャポニズムW(ウエディング)のすゝめ」という50分の大作になってしまいました。ラ・コトブキ企画というブライダルコーディネート会社があるということにして、結婚の風習やら男女の出会いやらを、ドタバタと追ったストーリー物です。短時間で、シロウト中心にも関わらず、我ながら良くやったと思います。千葉大生の死にもの狂いの協力あってこそだったと思います。

  5. 児島やよい

    岡田さんの今後の活動予定を教えてください。

  6. 岡田裕子

    2009年は、ミヅマアートギャラリーで個展をやるとおもいます。また、ギャラリーが北京にも店をだしたので、そこを下見して、そっちでも是非そのうち実験的な作品が出せたらいいなと。またいい新作をやれればいいと思っています。

岡田さんの、状況にフレキシブルに対応しながらも強い意志で作品をつくりつづける姿勢は、つくづくすごいなと思います。そして会田岡田家の愛にあふれた寅次郎くんとの日々。アーティスト夫婦、会田誠さんと岡田裕子さん、そして寅次郎くんの今後の作品がま すます楽しみです。
そういえば、あるとき夫がRQを見ていて「おまえ、生きてるねー」としみじみ言うので、会田さん岡田さんの会話と同じだあ、と笑ってしまいました。こども(特に幼児)ってエネルギーの固まりというか、何にでも全力で取り組む。ああ、生きてるってこういうことだったなあ、忘れてた、と思うのです。
どの子もみんな、全力で生きています。

2008年12月26日
写真=森本美絵
デザイン=中村アスカ(Luna-lab)

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